日米株価に生まれる差の要因とは?同方向に動くメカニズムを解説

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足並みが乱れつつある日米株価

よく日本の株式市場は、「前日の米国の株価推移を引き継ぐ」と言われています。「ダウが上昇したなら、翌日の日経平均株価も上昇する」といった具合です。

しかし昨今、日米の株価はお互いの歩調に乱れが生じてきています。

 

もちろん、それぞれの需給や、その時の市況によって異なり得るものなのです。しかし現在のグローバルマーケットにおいて、世界の株価がおおむね同様の方向性をとることは多くあります。

なかでも日米の株式市場に関しては、特異な市場事情もあり、同様の方向性をとる傾向はさらに顕著でした。

 

日米株価の足並みに乱れが見え始めたのが6月19日。それ以降、現在(2017年7月時点)に至るまでダウと日経平均株価のトレンドは逆を向いている状況です。

 

ダウは3月23日の高値と4月19日の安値を起点とした上昇チャネルの中で、7月20日現在も推移しています。

対して日経平均株価は、6月4日を高値としトレンドが上昇から下降へ転換、以降は同日の高値と6月18日の安値を起点とした緩やかな下降チャネルの中で7月20日現在も推移している。

 

「なぜ、このような現象が起こるのか」を解く前に、まず「なぜ、同方向に動くのか」ということから解説していきます。

 

日米株価が同方向に動く要因とは?

外国人投資家

一番の要因は、市場参加者にあります。日本の株式市場の6割強が外国人だという点です。

この占有率から見れば「日本株の大きい変動は、外国人投資家によって起こされている」と言っても過言ではないと言えるでしょう。

 

なぜ、「日本の株式市場なのに日本人参加者の割合が小さいか」と聞かれれば答えは簡単です。それは「日本人が株式や投資信託を資産として持たない傾向が強い」からです。

株式投資はどれくらいの割合で行うべき?貯金と投資の割合におけるポイントとはの記事でも触れていますが、日本は先進国の中では言わずと知れた投資後進国なのです。

未だに日本人は「資産貯蓄」といった概念が根強く残っており、多くの家庭では預貯金や保険・年金に対して大きく資金を割いています。

 

対して、外国人は資産として株式や投資信託を保有する傾向が強いので、日本の株式市場の主役が日本人ではなく、外国人となってしまうのは必然なこととも言えるでしょう。

そして外国人投資家の多くは、日本株を米ドル建てで取引しています。

 

日経平均株価のチャートにも、日本人投資家が普段見ているものとは別に、米ドル建て用のチャートが存在します。

両者のチャートはそれぞれ異なる状態になっていますが、日経平均株価のネックラインは米ドル建て用チャートを元に決まっていると言っても良いでしょう。

こういったチャートからも日本の株式市場の外国人占有率の高さが伺えますね。

 

そして海外の機関投資家等は、その投資資金を日本円で調達し米ドルに替えるという手順を踏みます。

これがいわゆる円キャリーというもので、2007年のサブプライム問題以前まで多くの外国人投資家に採用されていた手法でもあります。

 

活発化するキャリートレード

キャリートレード

そして今年2017年、円キャリートレードが活発化してきています。

要因としては、リーマンショックを始めとする世界金融危機以降続いた量的緩和政策に、各国が終止符を打とうと動き出している中、日本だけが金融緩和政策を進行させる姿勢を採っていることにあります。

 

テーパリングをいち早く実行したのは米国で、すでに三度の利上げを行い、0金利を脱している状態です。

欧州もこの流れに呼応し、テーパリングを掲げ、債券購入の制限などを示唆しています。

 

対して日本は、消費者物価指数の上昇率が目標に届いていないため、日銀はさらなる緩和政策が必要だと提言しているのです。

この日本のテーパリングに対する姿勢の違いに目を付けたのが、外国人投資家です。

 

そもそもキャリートレードとは、投資資金を低金利国で融資を受けて、取引用の通貨に両替するという手法。金融緩和政策の内容は様々ですが、根本は政策金利を下げることにあります。

逆に金融緩和のテーパリングとは、金融緩和政策を止めるということであり、ゆくゆくは利上げに向かうという方針になります。

 

つまり、日本と米国や欧州の金利差は今以上に開いていくと予測されるため、円キャリートエードの利点が高まると言えます。

 

基本的に自国の通貨価値と株価は、方向を伴うのが通例ですが、日本だけは逆行します。

これは日本株を買うために、外国人投資家が大量の日本円を米ドルに替えるために、円安が起こるという仕組みからです。

加えて言えば、円キャリーが利用されるのは日本株だけが対象ではありません。米国や英国の株式市場も対象となります。

話は逸れましたが、これが米国と日本の株価指数が動方向に動く一要因になっています。

 

日本の株価指数の先物市場取引はその国のデイタイムに行われますが、特にシカゴの取引時間は日本の深夜に当たります。ヘッジファンド等の機関投資家は、主にこの時間に裁定取引のため、日本の指数先物の仕込みに入るのです。

これは米国時間に先物価格を上昇させて乖離させておく必要があるためです。

この行為が円キャリートレードを加速させ、ドル高、円安を誘い、結果として米国の製造株の上昇を誘うため、ダウを始めとした指数も上昇するというワケです。

 

そして日本時間に裁定取引の実行となり、先物を売り、日本の現物株や指数連動型のを一気に買い出すのです。

これが「日本の株式市場は、前日の米国の株価推移を引き継ぐ」、いわゆる「ダウが上昇したなら、翌日の日経平均株価も上昇する」となる要因です。

 

ダウと日経平均株価に生まれる大きな差

決算期のずれによる影響

決算期のずれ

では、6月19日から「ダウが上昇して、日経平均株価が下落している」のはなぜなのでしょうか。

時期的なことを考慮すれば、日米の決算期、及び決算発表の時期の違いが一番の要因と考えられます。

 

そもそも日本企業の多くは決算期が4~翌年3月なのに対し、米国企業のほとんどは1~12月となっています。

そうなると当然、決算発表の時期も違ってくるわけですが、日本は5月に大半の企業の本決算の発表が行われます。対して米国企業の大半は、7月に第2Qの決算発表を行います。

米国と日本の株価指数の歩調がずれ出したのが6月19日であるなら、タイミングとしても決算期のずれが要因とみて申し分ないでしょう。

つまりこの時期はいったん、日本では決算発表という材料を消化、対して米国は翌月への期待で、株式が買われやすい雰囲気が蔓延するということになります。

 

ドル円の要素が株価に絡んだ?

さらに日米の株価に、ドル円の要素を加えると現況が一層よく見えてきます。

ダウと日経平均株価の方向性がずれ出した頃のドル円を見てみると、6月19日のダウと日経平均株価がこの時期の高値を付けているのに対し、ドル円は安値を付けており、全く逆の動きとなっています。

その後、ドル円は利上げ期待から上昇に転換し、7月11日に高値を付けて反落。同じように日経平均株価も同日にチャネルラインの上限に付け、翌日より反落しています。

対してダウはこの日がチャネルラインの下限となり、上昇に転じます。

先述の円キャリートレードを前提とした考察をするならば、両国の株価は同様の動きをするハズです。

しかしこの時期だけを見ても、ダウだけが反対の動きをしており、別の要素が加わっていると考えることもできる。

 

ドル安を唱え続けるトランプの台頭

もちろん、株価が上昇する要因は円キャリーだけではありませんが、実は今年はドル円とほぼ逆の動きを続けているのです

まずひとつ考えられるのは、トランプ大統領の台頭が影響しているということです。

 

米国に長くはこびっている財政赤字の打開のため、トランプ大統領は必死にドル安誘引発言を行っていました。

その上で法人税減税政策などを打ち出したため、今年の米国の株価は堅調となり、株価と為替の乖離が起きていると考察できます。

 

逆の観点ですが、今年のドル円は市場環境の割に弱いとも見れます。よく挙げられるのが、トランプ大統領やその周辺で起こる過激な言動による懸念です。

現在の米国は先進国では唯一利上げ期待が蔓延している国なので、本来米ドルは買われやすくなっています。それなのに今年前半のドル円は軟調でした。

それには、米国の金利に関するひとつの不条理が起因していると思われます。

そもそも政策金利とは、国の基準となる値ですが、その中でももっとも直接性が高いのが短期金利の代表であるレートです。

米国が利上げするたびレートは上昇基調を保っていますが、それに対し「長期金利はついてこない」といったジレンマが発生しているのです。

 

そもそも利上げをしたからといって長期金利が上がっていくものではありませんが、現在の米国は利上げペースの見通しを先々にわたり述べています。

これが目標値までの市場誘引ということであれば、非常に有効的な手段だと言えるでしょう。

 

そもそも長期金利が伸び悩んでいる要因はまず現在の日本と欧州にあるでしょう。両国は、未だ金融緩和状態です。

つまり米国を含めた三者の中では、米国の債券は突出して利回りが高いということになります。

 

したがって、どうしても米国債の需要が高まるため、長期金利が上がり難いという構図ができ上がってしまうということではないでしょうか。

しかし今後はテーパリングを実施する方向に向かっているため、欧州からの米国債へのシフトは制限される可能性があります。そうなれば、米国の長期金利は上昇していく可能性も考えられるでしょう。

 

世界金融危機によるダメージ

ダメージ

しかし、景気が回復していると言われている米国ですら、世界金融危機のダメージは大きく、インフレ率は目標値にまだまだ届かない状況となっており、市場は本当のリスクテイクには至っていません。

 

やはり長年の国債依存はそうそう抜け出せるものではなく、米国の利上げは、周辺諸国からはあまりにも際立って見えてしまったということでしょう。

この米国の長期金利の低下は、為替相場にも度々影響を及ぼしています。動意の少ない今年のドル円の軟調自体は、大体が長期金利の低下によるものと考えられます。

 

特にトランプ政権に変わってからは、大小含め様々な懸念を市場に走らせているので、投資家達はすぐに米国債に非難してしまいます。

これは株式に至っても同様の影響を受けますが、トランプ政権の政策は何だかんだ言っても、米国企業の展望にはプラスにはなるでしょう。

 

株価はこのような堅調地合の最中であるため、長期金利低下すると株式の絶好の押し目が来ると、米国株式投資家はむしろ熱を上げています。

ゴールドマンサックスなど、金融株のそれは特に良い狙い目だということが今や定例となっています。

 

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