米国指標の不整合を起こしていたジレンマとは

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日経平均株価に影響をもたらすダウ市場とは?

足並みが乱れつつある両国

よく日本の株式市場は、「前日の米国の株価推移を引き継ぐ」と言われている。「ダウが上昇したなら、翌日の日経平均株価も上昇する」といった具合だ。しかし昨今、お互いの歩調に乱れが生じてきている。

もちろん、それぞれの需給や、その時の市況によって異なり得るものだが、現在のグローバルマーケットにおいて、世界の株価がおおむね同様の方向性をとることは多い。なかでも日米の株式市場に関しては、特異な市場事情もあり、他国と比べてもその傾向はさらに顕著であった。

両者の足並みに乱れが見え始めたのが、6月19日。以降、現在に至るまでダウと日経平均株価のトレンドは逆を向いている状況だ。ダウは、3月23日の高値と4月19日の安値を起点とした上昇チャネルの中で、現在も推移している。

対して日経平均株価は、6月4日を高値としトレンドが上昇から下降へ転換、以降は同日の高値と6月18日の安値を起点とした緩やかな下降チャネルの中で現在も推移している。「なぜ、このような現象が起こるのか」を解く前に、まず「なぜ、同方向に動くのか」を解析しなければならないだろう。

外国人投資家による日本株が受ける影響

一番の要因は、市場参加者に原因がある。日本の株式市場の6割強が外国人だという事だ。もっと言えば「日本株の大きい変動は、外国人投資家によって起こされている」と言っても過言ではない。なぜ、「日本の株式市場なのに日本人参加者の割合が小さいか」と聞かれれば答えは簡単だ。

「日本人が株式や投資信託を資産として持たない傾向が強い」からである。日本は先進国の中では、言わずと知れた投資後進国であり、未だに「資産貯蓄」といった概念は根強い。対して外国人は、資産として株式や投資信託を保有する傾向が強いので、日本の株式市場の主役が日本人ではなく、外国人となってしまうのは必然な事である。

そして外国人投資家の多くは、日本株を米ドル建てで取引している。日経平均株価のチャートにも、日本人投資家が普段見ているものとは別に、米ドル建て用のチャートが存在する。

両者のチャートはそれぞれ異なる状態となっているが、日経平均株価のネックラインは、米ドル建て用チャートを元に決まっていると言っても良い。こういったところからも、日本の株式市場の外国人占有率の高さが伺える。

そして海外の機関投資家等は、その投資資金を日本円で調達し米ドルに替えるという手順を踏む。これがいわゆる円キャリーというもので、2007年のサブプライム問題以前まで多くの外国人投資家に採用されていた手法である。

活発化するキャリートレード

そして今年2017年、円キャリートレードが活発化している。要因としては、リーマンショックを始めとする世界金融危機以降続いた量的緩和政策に、各国が終止符を打とうと動き出している中、日本だけが金融緩和政策を進行させる姿勢を採っていることにある。

テーパリングをいち早く実行したのは米国で、すでに三度の利上げを行い、0金利を脱している。欧州もこの流れに呼応し、テーパリングを掲げ、債券購入の制限などを示唆している。

対して日本は、消費者物価指数の上昇率がの目標に届いていないため、日銀はさらなる緩和政策が必要だと提言している。このテーパリングに対する姿勢の違いに目を付けたのが、外国人投資家である。

そもそもキャリートレードとは、投資資金を低金利国で融資を受けて、取引用の通貨に両替するという手法だ。金融緩和政策の内容は様々だが、根本は政策金利を下げる事にある。逆に金融緩和のテーパリングとは、金融緩和政策を止めるという事であり、ゆくゆくは利上げに向かうという方針となる。

つまり、日本と米国や欧州の金利差は、今以上に開いていくと予測されるため、円キャリートエードの利点が高まるという事だ。基本的に自国の通貨価値と株価は、方向を伴うのが通例であるが、日本だけは逆行する。

日本株を買うために、外国人投資家が大量の日本円を米ドルに替えるために、円安が起こるという仕組みである。加えて言えば、円キャリーが利用されるのは日本株だけが対象ではない。米国や英国の株式市場も対象となる。

話は逸れたが、これが米国と日本の株価指数が動方向に動く一要因になっている。日本の株価指数の先物市場は、シカゴやシンガポールにもある。これらの取引は、その国のデイタイムに行われるため、特にシカゴ時間は日本の深夜に当たる。

ヘッジファンド等の機関投資家は、主にこの時間に裁定取引のため、日本の指数先物の仕込みに入る。いわゆる米国時間に先物価格を上昇させて乖離させておく必要があるためだ。この行為が円キャリートレードを加速させ、ドル高、円安を誘い、結果として米国の製造株の上昇を誘うため、ダウを始めとした指数も上昇する。

そして日本時間に裁定取引の実行となり、先物を売り、日本の現物株や指数連動型のを一気に買い出す。これが「日本の株式市場は、前日の米国の株価推移を引き継ぐ」、いわゆる「ダウが上昇したなら、翌日の日経平均株価も上昇する」となる要因である。

ダウと日経平均株価に生まれる大きな差

決算期のずれによる影響

では、6月19日から「ダウが上昇して、日経平均株価が下落している」のはなぜか。時期的な考慮をすれば、日米の決算期、及び決算発表の時期の違いが一番の要因であろう。

そもそも日本の企業の多くは、決算期が4~翌年3月となのに対し、米国企業のほとんどは1~12月となっている。そうなると当然、決算発表の時期も違ってくるわけだが、日本は5月に大半の企業の本決算の発表が行われる。

対して米国企業の大半は、7月に第2Qの決算発表を行う。米国と日本の株価指数の歩調がずれ出したのが6月19日であるなら、タイミングとしても申し分ない。つまりこの時期はいったん、日本では決算発表という材料を消化、対して米国は翌月への期待で、株式が買われやすい雰囲気が蔓延するという事だ。さらに日米の株価に、ドル円の要素を加えると現況が一層よく見えてくる。

ダウと日経平均株価の方向性がずれ出した頃のドル円を見てみると、面白い事がわかる。6月19日のダウと日経平均株価がこの時期の高値を付けているのに対し、ドル円は安値を付けており、全く逆の動きとなっている。その後、ドル円は利上げ期待から上昇に転換し、7月11日に高値を付けて反落している。

同じように日経平均株価も同日にチャネルラインの上限に付け、翌日より反落している。対してダウはこの日がチャネルラインの下限となり、上昇に転じている。先述の円キャリートレードを前提とした考察をするならば、両国の株価は同様の動きをするハズである。しかしこの時期だけを見ても、ダウだけが反対の動きをしており、別の要素が加わっていると考える事もできる。

ドル安を唱え続けるトランプの台頭

もちろん、株価が上昇する要因は円キャリーだけではないが、実は今年のは、ドル円とほぼ逆の動きを続けている。まずひとつは、トランプ大統領の台頭が影響しているだろう。

米国に長くはこびっている財政赤字の打開のため、必死にドル安誘引発言を行っていた。その上で法人税減税政策などを打ち出すため、今年の米国の株価は堅調となり、株価と為替の乖離が起きていると言えよう。

逆の観点だが、今年のドル円は市場環境の割に弱い。よく挙げられるのは、トランプ大統領やその周辺で起こる過激な言動による懸念とされている。現在の米国は先進国では唯一、利上げ期待が蔓延している国なので、本来米ドルは買われやすくなっている。それなのに今年前半のドル円は軟調であった。それには、米国の金利に関するある不条理が起因していると思われる。

そもそも政策金利とは、国の基準となる値であるが、その中でももっとも直接性が高いのが短期金利の代表であるレートである。米国が利上げするたびレートは上昇基調を保っているが、それに対し「長期金利は着いてこない」といったジレンマが発生している。

そもそも利上げをしたからといって、長期金利が上がっていくものではないが、現在の米国は、利上げペースの見通しを先々にわたり述べている。これは目標値までの市場誘引という事であれば、非常に有効的な手段である。

そもそも長期金利とは、そんなに安易に動くものではないが、伸び悩んでいる要因はまず現在の日本と欧州にあるだろう。両国は、未だ金融緩和状態である。つまり米国を含めた三者の中では、米国の債券は突出して利回りが高いという事になる。

したがって、どうしても米国債の需要が高まるため、長期金利が上がり難いという構図ができ上がってしまうという事だろう。しかし今後は、テーパリングを実施する方向に向かっているため、欧州からの米国債へのシフトは制限される可能性がある。そうなれば、米国の長期金利は上昇していく可能性はある。

世界金融危機によるダメージ

しかし、景気が回復していると言われている米国ですら、世界金融危機のダメージは大きく、インフレ率は目標値にまだまだ届かない状況となっており、市場は本当のリスクテイクには至っていない。

やはり長年の国債依存はそうそう抜け出せるものではなく、米国の利上げは、周辺諸国からはあまりにも際立って見えてしまったという事だろう。この米国の長期金利の低下は、為替相場にも度々影響を及ぼしている。動意の少ない今年のドル円の軟調時は、大体が長期金利の低下によるものである。

特にトランプ政権に変わってからは、大小含め様々な懸念を市場に走らせるので、投資家達はすぐに米国債に非難してしまう。これは株式に至っても同様の影響を受けるが、トランプ政権の政策は何だかんだ言っても、米国企業の展望にはプラスにはなる。

株価はこのような堅調地合の最中であるため、長期金利低下すると、株式の絶好の押し目が来ると、米国株式投資家はむしろ熱を上げている。ゴールドマンサックスなど、金融株のそれは特に良い狙い目だという事が、今や定例である。

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