日銀が物価上昇率見通しを先送り…なぜ2%が達成できない?

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焦る日銀が出した先延ばし案

日銀が、目標とする2%の物価上昇率の達成時期の見通しを「2019年度ごろになる可能性が高い」として、1年後にずらしました。

20日に公表した経済と物価の「展望レポート」で「大規模な金融緩和にもかかわらず物価上昇の動きが鈍い」ということが、今回の後ズレの理由とされています。

物価上昇率の見通しも、2017年度が1.4%から1.1%に、2018年度を1.7%から1.5%に引き下げるという弱気な姿勢が窺えます。

金融緩和に踏み切ってから既に4年以上が経ちますが、日銀が物価目標の達成時期の先延ばしはこれで6度目となります。

日銀 物価上昇率 2%景気

一方、国内の景気については「緩やかな拡大に転じつつある」から「緩やかに拡大している」と表現を変えています。

堅調な海外経済を背景に輸出や生産の増加傾向が続いていることに着目し、3か月ぶりに上向きな判断を採ったと言えるでしょう。

しかし、物価は上がらない…。

海外景気の堅調さから企業の業績は過去最高を達成しているところもあり、賃上げも一部では行われているのにこの現象はなぜ起こるのでしょうか。

一つ目の理由として考えられるのは、言うまでもなく消費の伸び悩みでしょう。実際に、消費者物価指数の上昇率はこのところ0%台に留まっています。

「賃上げしているのに」という意見も出てきそうですが、収入が上がったとしても「支出が増える」もしくは「増えると予想される」のであれば、消費者の財布の紐は当然固くなります。

ではなぜ、「支出が増える」もしくは「増えると予想される」のか?詳しく解説していきます。

2%の物価上昇率達成が困難な理由

日銀 物価上昇率 2%消費税

消費税増税と将来的な社会保障の削減

まず近い未来では、消費税の増税が挙げられます。消費税増税は生活にダイレクトに影響する事象であり、下手に先送りをしているものだから余計に懸念が国民の意識の中に強く刷り込まれていってます。

これは心理的な話ですが、現在までの例を見ていると、特に日本人は増税前は非常に敏感になり反発も起こす傾向があります。

しかし同時に、消費税増税がいざ起こってしまえば結局順応してしまいそれ以降何も言わなくなる傾向も併せ持っています。

今回の増税は、消費と物価が伸び悩んでいることから延長措置が採られています。

これが逆に、消費者の「事前の恐れ」というものを掻き立ててしまうため、備えとして国民は消費を抑制してしまうのではないでしょうか。

「物価が上がらない」と言っても国民にとっては増税により実質的に上がるわけです。

「値上げ」ということは、そこからさらに支出を上乗せされることになるのだから、警戒するのも無理はありません。

また、もっと遠い未来を見れば、社会保障の削減も挙げられます。既に現役世代は自分たちの将来の年金需給に対して懐疑的です。

当然、少子高齢化という現実が起こっているため、国の収支のバランスが不利に傾いていくだろうということは小学生でも理解できる事実です。

いわゆる、収入と支出のバランスが偏ってくる将来が容易に想像できてしまうため、消費することに対する恐怖を覚えてしまっているのだと考えられます。

賃上げしている企業は少数派

日銀 物価上昇率 2%賃金

二つ目の理由としては、企業の「労働者に対する還元割合」の問題です。

「賃上げしている」ことがメディアによって、世間の多数派のような伝えられ方をしていますが、実際にはかなりの少数派でしょう。同時に企業の景気の上向き割合はそれより遥かに高いと思われます。

つまり、企業は利益を労働者に「還元出来ていない」ということになります。これは企業が「意地悪だから」ということではありません。

近年の大幅な金融緩和と海外景気の堅調さから過去最高益を叩き出している企業もあることに先ほど触れました。

しかし2008年の世界金融危機以降の5年間は、株価の低迷や極端な円高により国内の輸出企業は低迷期間に陥っていました。

おそらく現在はこの期間に飲んでいた苦汁をようやく企業が吐き出せているというような状態だと考えられます。つまり負の遺産が近年の好況によって、ようやく消化できているということです。

したがって、企業が態勢を整える期間を終えるまで、利益を賃金に転嫁し難いという現状があるということになります。

景気が良いのは主に大企業

そして三つ目の理由は、「景況が良い」というのは主に大企業の実情であるということです。つまり中小では、まだまだ恩恵を受けられていない企業が山程あるということです。

世界金融危機以降、苦渋を舐めたのは大企業以上に中小企業でしょう。その苦しい期間に大企業は、取引のある中小企業に無理難題を押し付ける結果になったということは、頻繁耳にしていたことではあります。

極端な言い方をすれば、「イジメの連鎖」のようなものです。

消費税に対するやり取りが一番如実で、大企業は仕入れ代金を、仕入れ元の中小企業に「消費税分を値引きさせる」というのはよく聞く話です。実際、倒産してしまう中小企業も山程ありました。

しかし基本的に中小企業は、いくつもベースとなる事業を保有している大企業とは違ってひとつの事業に対する依存度が高いです。

したがって何とか生き残り景気が上向いていても、ベース事業が傷ついているのであれば、建て直しは非常に困難と予想できます。

そして日本の就業者の7割強は、中小企業に勤めています。その中で賃上げの恩恵を受けていると言ったら、本当にごくわずかでしょう。

業種による違いはもちろんあると思いますが、根幹である製造業などから順当に賃上げがなされると考えると中小企業レベルに賃上げという流れが起こるのはまだまだ先の話かもしれません。

負のスパイラルに苛まれる日本国

日銀 物価上昇率 2%日本

このような背景もあり、2%の物価目標の実現がますます遠のく厳しい状況が続くと考えられます。

黒田バズーカ」とも呼ばれた日銀の黒田総裁の大規模な金融緩和策導入から既に4年。今回の物価目標の実現見通し先送りの発表時の黒田総裁は、非常に難儀な表情だった印象を受けました。

実際に、この大規模な金融緩和により日本経済は回復を続けてきたと言えます。株価も上昇。1万円すら大きく割り込んでいた日経平均株価は2万円台を回復するまでとなり、円は対ドルで2007年のサブプライム問題勃発前の水準を割り込みました。

現在伸び悩んでいるとはいえ、物価も下げ止まりとなり、デフレ状況ではなくなっています。この背景について日銀は、携帯電話の値下がりといった一時的な要因があるとしていました。

たしかに記者会見報道のとおり、格安スマホの台頭や各キャリアにる顧客獲得合戦により、不当とも言える値下げが携帯電話業界に横行していたのは事実です。

それが値下がりし、同時に無料通話ができるSNSが出現したことも一因と言えるでしょう。

ただ長くデフレが続いていた日本では、物価が上がりにくいという意識が根本的に蔓延しています。光熱費等などはさりげなく上昇していますが、出費として外すことはできません。

だから、光熱費など出費として外すことのできないもの以外の出費を抑制するということになります。

つまり、そのほかのサービスを提供する企業にしわ寄せが来るという解りやすいスパイラルになるわけです。

だからといって企業の間では賃金を大幅に引き上げることなど簡単にはできないこと。さらに、好景気というものは原材料費の高騰も招きます。それなのに消費が低迷しているから、企業は原材料の値上がりを商品価格に転嫁できない…

結局は社会と個人、景気と消費の歪みが現在に存在してしまっているのです。

世界に広がる金融緩和がもたらす影響

日銀 物価上昇率 2%金融緩和 影響

金融緩和とは、流通するお金の量を増やすことにより市場をお金でかき混ぜて経済を刺激することです。その効果がある程度確認されたところで、次は市場の資金流入を抑制するのが本来の健全な経済社会です。

しかし、大規模な金融緩和を行っていたのは日本だけではありません。世界金融危機以降、欧米をはじめ世界的に進められてきました。米国は既にテーパリングを実施して0金利を脱しており、欧州も今まさにその流れに追随しています。

アメリカ合衆国の中央銀行制度における最高意思決定機関のFRBは、今後も量的緩和策で市場に大量の資金を供給するため、膨らんだ資産規模の縮小についても経済情勢をみながら年内に始める見通しだとして、金融を引き締めを強める意向を採っています。

カナダ中銀でも国内経済が堅調だとして、およそ7年ぶりとなる政策金利の引き上げを決めました。

先月報道されたBOE(英中銀)のカーニー総裁が利上げの準備は出来ていないと発言したことから、緩和の縮小を議論する可能性に言及しています。

対して、さらに国債を買い入れて大規模な金融緩和の継続を迫られている日本は、あきらかに先進国で違う方向を向いていました

それが、日銀も長期ゾーンの国債買い入れを今年初めて減額しました。

午前10時10分の金融調節で、残存期間5年超10年以下の国債買い入れオペを前回より300億円減額の4700億円と通知。

この異例の措置により長期金利は低下基調となり、先週末は0.065%と6月30日以来の水準まで下げました。

金融緩和でデフレ脱却なるか?

日銀 物価上昇率 2%デフレ脱却

まだまだささやかではありますが日銀がはじめて金融緩和のスタンスに変化の兆しを見せたことは、市場にとって新しい思惑を発生させる可能性があります。

先述の先送り報道の雰囲気から、一転し今回はサプライズを感じられます。

世界中が国債購入増額に追われていた頃とは海外情勢は大きく変わっています。やはり日銀も、世界的な利上げ圧力にトレースするように国債買い入れの減額が出来たということと思われます。

今回のこの小さい変化が、さらに市場の日本に対する見方を変化させ、国内の企業が呼応するようなトレンドを作ることができれば、デフレ脱却の現実化は近づいてくるのではないでしょうか。

その内容は様々あると思われますが、直接的に考えるならば実際の消費を生み出す労働者に対する賃上げということになると思われます。

実際に報道などを見ていても、日本を代表する企業の経営陣達は今後の展望について悲観的な見方はしていないようです。

あとは、そのマインドが末端消費者に浸透するかどうかの問題です。

経団連の榊原会長も、将来不安をなくす為の賃上げは今後も続けていくべきだという見解を示しています。

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