拡大止まらぬ、日本企業の先走り回避の買収劇場

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M&A

ここまで拡大した日本企業のM&A

2016年度は日本企業による海外企業を対象としたM&Aに関し、件数・金額とも年度ベースで過去最高となっていた。これは人口減少に伴う国内市場が先細り感に対し、業種を問わずに海外M&Aを積極的に手掛けて業容拡大を図っているという背景がある。

2016年度の日本企業による海外M&A(IN-OUT)は、件数で前年度比5.7%増の627件、金額で33.8%増の10兆9127億円。

金額で10兆円を突破したのは、データで遡れる昭和1985年度以降では初めてであり、ソフトバンクグループが英半導体開発大手アーム・ホールディングスを買収した際の3兆3234億円が最高で、このディールが日本企業の海外買収案件としては過去最大となったのは記憶に新しい。

次いで、アサヒグループホールディングスがビール世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)から東欧の5カ国のビール事業を買収し、買収価格の総額は8912億円であった。対象国は1/3が北米で210件、金額での比較は欧州が全体の約半分を占める5兆5111億円となっている。

2017年もM&Aの規模は拡大している?

この流れは2017年も引き継いでおり、4~9月期は前年同期より14%多い339件となっている。件数ベースでは集計を始めた1985年以降で過去最高となり、1件当たりの金額は平均244億円と4割減った。

これは、中規模の案件が増えており、内需企業が海外販路の獲得を目指すなどM&Aの裾野が広がってきている事を示している。

一方日本企業によるものに限定せず世界のM&A動向を見てみると、総額は2000年のITバブル期を上回り、過去最高を更新している。

その中でもIT(情報技術)企業のM&A価格の上昇が目立ち、2017年1~9月は対象企業の年間利益の平均20.9倍まで上昇。

自動運転フィンテックなど急成長する新領域の覇権を狙い、割高な価格を払ってでもそのような有望企業を囲い込む買収競争が激化したという事が背景だ。

PEファンド等も買収攻勢を強めており、カネ余りも価格上昇に拍車を掛けている。

M&Aをした事による企業の苦難

一方で、M&Aをプロダクトした国内企業の中の多くが損失計上をしているという現実もある。国内M&A案件を手掛けた451社の39%、海外M&A案件を手掛けた246社の内50%がそれに該当している。

やはり先述の競争入札による高値掴みが一つ、そして買収後の経営管理の難しさが挙げられている。

そもそも被買収企業の情報開示が十分でないうえに、買収する側に競合する相手が出てくれば高値掴みになるのは必然であろう。M&Aにおいて同じ案件は2つと無いので、逃してはいけないという意識が先行する。

したがって経営トップが買収の意思を固めてしまうと、担当者は買収を成立させることが目的になり、採算に合わない案件でも強行してしまうという実情がある。

買収後の経営管理の難点についても、M&Aをプロダクトする国内の多くの企業は機動性が低いと言われている。

中には自社にM&A専門セクションを設立し、自己の分析判断により定めたターゲットに着手する企業も存在するが、ほとんどの案件が投資銀行からの紹介によるものが多い。

これは海外案件の失敗例が多い事も示しているが、やはりまず被買収企業の情報開示が十分でない事、加えて紹介をされた後に検討を始めるので、どうしても最終的な成立までに時間が掛かる

この時間の経過が競合相手を生む確率を高め、買収交渉も難しくしている。

そして買収後のアフターケアに関して、投資銀行の不十分なアフターケアにより、買収側の経営管理がままならなっていない。

しかし投資銀行は、あくまで案件を成立させて仲介手数料を稼ぐ事が主たる目的なので、こうなる事は容易に想像できるだろう。

こういった事態に陥らないためにも、仲介を挟むにしても投資銀行に頼りきりになるのではなく、買収する相手を自身でしっかり見極め、それに対する経営スキームをしっかり持って挑む事が、今後の日本企業の課題とも言えるだろう。

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