会社四季報は1936年創刊以来、証券会社、金融機関、個人投資家の企業情報収集に役立てられている投資本です。
四半期ごとに150人以上の担当記者が全上場企業の短・中・長期の業績を見通して評論します。
投資に役立つ本ですが、見方が難しいので敬遠する個人投資家は少なくないはずです。
当記事では、四季報の企業ページを12項目に区分けして、各項目の見方を元証券マンの管理人が解説。
初心者の方だけでなく、“もっと四季報を使いこなしたい”と考えている方に、一歩踏み込んだ四季報の見方を覚えてもらい、有望株探しにお役立ていただけますと幸いです。
記事の目次
会社四季報とは
四季報とは全上場企業(約3800社)の今期・来期業績を記者が独自予想している企業情報誌です。
業績予想だけでなく、会社の新しい取り組みや中長期的な課題、財務状況、株主や役員の構成など、企業分析に必要な情報が網羅されています。
四季報は3月・6月・9月・12月の年4回発売。
業績状況や新商品・新事業などの「事実」と、前号と比較して異なる「変化」に注目をすることで、有望銘柄探しに活かすことができます。
では早速、四季報の見方を確認していきましょう。
会社四季報の見方 12項目を解説
四季報の企業ページを12項目に区分けしたので①から順に解説をしていきます。
業種
①は企業の「業種」です。
東証33業種の内、その企業に近い業種が反映されています。
ただ、業種はあくまで参考程度に捉えて下さい。
例えばホテルや不動産ファイナンス事業、不動産管理を柱とするFRACTALE(3750)は、「その他金融業」「不動産」ではなく「情報・通信」に振り当てられています。
業種は必ずしも適切な訳ではないため、あまり注視する必要はないでしょう。
社名・事業内容・本社住所・仕入れ先・販売先 等
②は会社概要や取引先情報が掲載されています。
■ 証券コード
企業名の上にある4桁の数字は証券コードと呼ばれ、上2桁は業種ごとに番号が振られています。
四季報をはじめ株式投資情報誌はコード順に銘柄掲載することが多いので、気になる銘柄の証券コードは覚えておくと便利です。
ちなみに下2桁が「01」の企業は各業種の代表銘柄と言われ、商社大手の伊藤忠商事は(8001)、日本銀行は(8301)のように分類されています。
■ 特色・連結事業
企業名の左側には「特色」「連結事業」の記載があります。
「特色」は会社の特徴や強み、主な事業や業界内の地位やシェアなどを把握することが可能です。
四季報発売の3ヶ月毎に見直されるので、会社の変遷が見えるのがポイント。
特に新興株やIT関連株は変化のスピードが早いので、最新の企業状況を特色から掴みましょう。
「連結事業」では企業の収益柱を確認します。
直近決算期時点の売上高構成比を記載しているので、その企業の主力事業だけでなく、どの事業が好調なのかが一目瞭然です。
数字の見方は下記の通り。
事業名の下にある数字が売上高構成比※、()内の数値は売上高利益率です。
※事業数字は売上高の何%を占めているか。合計数値は100になります。
過去の四季報の連結事業を見比べれば成長分野が確認可能です。
また、競合他社と連結事業を比較すると、どちらの企業の柱事業が好調なのかを測ることも。
仮に同業種の大手A社と中堅B社を比較した際、B社の売上高利益率が高ければ、経営を上手に行えているのはB社だと考えられます。
事業状況をより正確に確認することができるでしょう。
一点注意しておきたいのが連結事業に【海外】が含まれているケース。
【海外】は日本からの輸出、現地子会社の売上高をあらわす数値ですが、海外比率の高い企業は為替の影響を受けやすいです。
要するに外的要因に左右されやすいので、海外ニュースも押さえることを心がけて下さい。
■ 会社情報・取引先
当欄では特に「店舗(工場)」「従業員」「仕入先・販売先」に注視しましょう。
まず「店舗」ですが、小売業やサービス業などリアル店舗を構える企業は、各地域の出店店舗数を掲載しています。
店舗数で企業力を見ましょう。
過去の四季報と見比べて店舗数の増減を知ることで、企業が拡大路線にあるのか、縮小過程なのかを確認できます。
「従業員」は平均年齢で会社の活力、年収は同業他社に比べて違和感のない水準なのかを確認。
平均年齢が若い会社は勢いのある企業が多く、成長余力があると捉えることができるので、将来性を測る指標に有用です。
年収では従業員に利益を還元しているのか、着実に成長を続けているかを判断します。
従業員のことを考えている企業は株主還元をしやすい傾向もあるので、配当や優待にも期待できそうです。
「仕入先・販売先」はリスク確認をしましょう。
仕入れ先や販売先に先行き不安視される企業が載っている場合は要注意です。
販売先の倒産などで負債を被るケースはゼロではありません。
また、株式市場は「連想」で株価変動することがよくあるので、仕入れ先・販売先の状況を調べておくと「連想」の先読みもできるでしょう。
業績記事・材料記事
業績、材料記事は四季報の注目ポイントです。
業績記事は業績予想の見通し、材料記事は中・長期的な経営戦略や課題を記述しています。
まずは業績記事の見方を解説します。
■ 業績記事
業績記事は『見出し』に着目します。
見出しとは業績記事の内容を一言で表現したもので、見出しだけで企業の業績動向が分かります。
中でも「独自増額」「連続最高益」「最高益」「飛躍」「絶好調」には注目です。
上記見出しは特に業績好調の証。
今後の企業成長に期待できるあらわれなので、有望株選びに役立つと思います。
基本的には今期の営業利益予想が対象ですが、本決算が近い場合は来期予想の見出しが描かれることもあるので、企業の決算月は確認しましょう。
また、業績欄は次の決算期もしくは来期の業績予想が記述されていますが、ベースは営業利益の予想についてです。
増益、黒字は継続的なものなのか、今は減益、赤字でも回復は近いのか、今後の業績動向を見極めながら読み進めて下さい。
■ 材料記事
中・長期の業績見込みや経営方針に触れているのが材料記事です。
業績記事同様見出しは付くものの、各企業の投資戦略に合わせた内容となるので統一性はありません。
そのため、旬なテーマや新たな取り組みを行っている見出しに注目です。
例えば「5G」「AI」などの2020年以降も注力続くテーマ、「新事業」「新分野」「開発」といった中・長期的な成長に期待できるもの。
先を見据えて読み解くことが重要です。
材料欄は企業が掲げる2~5年ほどの中期経営計画の中から、特に重要と思われる箇所が抽出されています。
上記見出しと合わせて今後の業績に期待できる経営戦略なのかを分析しましょう。
業績数字
「業績」も四季報を活用する上で見逃せない重要項目です。
四季報には、四季報予想と会社予想の2つの業績予想が掲載されています。
会社予想には経営者の思惑が加味され、投資家から資金を集めるために強気予想を出したり、下方修正を避けるために弱気予想を出すことがしばしばあります。
対して、四季報予想は一切私情を挟みません。
等身大の予想を算出することが可能なので、四季報の業績予想は大変参考になるデータといえます。
では、具体的な見方を確認していきましょう。
四季報の業績は、損益計算書の中核項目から成り立っています。
「売上高」「営業利益」「経常利益」「純利益」「1株利益」「1株配当」の6項目です。
上段から、
2:中間決算(第2四半期決算)の実績と四季報予想
3:会社予想の通期予想
※第1~3四半期決算発表後の号では各四半期累計の実績も掲載
の順に並んでいます。
四季報の業績マークは下記の通りです。
業績マーク | 意味 |
---|---|
連 | 日本会計基準の連結決算 |
◎ | 米国会計基準の連結決算 |
◇ | 国際会計基準(IFRS) |
単 | 単独決算 |
会 | 会社予想 |
予 | 四季報予想< |
業績では「売上高」「営業利益」の2つの項目に注視しましょう。
両項目ともに四季報予想が2期連続で5%以上上昇していることが望ましいです。
会社の儲けは利益ですが売上なくして利益はありえません。
売上高の減少が続き人件費などのコスト削減で利益をねん出しても、目先の対策はいずれ限界がきます。
売上高を伸ばすことが成長の原動力です。
そして、営業利益が最重要です。
営業利益は売上総利益(売上高-売上原価)から販管費を引いた差額で、本業での儲けを示します。
つまり、本業の稼ぐ力、会社の実力を見る指標です。
前期からの営業利益の伸び率を営業増益率というのですが、営業増益率が高いほど本業での儲けが拡大していることになります。
四季報の業績を見る際には「売上高」「営業利益」が伸びているかを確認しましょう。
前号比矢印・会社比マーク
前号比矢印と会社比マークは、サプライズ発表に期待できるサインです。
要するに四季報のおすすめ銘柄です。
前号比矢印の「大幅増額or増額」と会社比マークの「大幅強気or強気」が両方付いている銘柄はお宝銘柄候補といえます。
■ 前号比矢印
四季報前号・今号の営業利益予想を比較、変化率を見る指標。
記号 | 意味 | 内容 |
---|---|---|
↑↑ | 大幅増額 | 30%以上の増額 |
↑ | 増額 | 5%以上30%未満の増額もしくは損益0からの黒転 |
→ | 前号並み | 5%未満の増減額 |
↓ | 減額 | 5%以上30%未満の減額もしくは損益0からの赤転 |
↓↓ | 大幅減額 | 30%以上の減額 |
■ 会社比マーク
会社計画と四季報予想を比較、四季報予想の強気・弱気を見る指標。
記号 | 意味 | 内容 |
---|---|---|
にこちゃん×2 | 大幅強気 | 乖離率30%以上 |
会社比強気 | にこちゃん | 乖離率3%以上30%未満、または会社予想がゼロで、四季報予想が黒字 |
会社比弱気 | かなしみマーク | 乖離率▲3%以上▲30%未満、または会社予想がゼロで、四季報予想が赤字 |
かなしみマーク×2 | 大幅減額 | 乖離率▲30%以上 |
マークが付いているか否かを見るだけなので、誰でも簡単に四季報銘柄を探すことが可能です。
ただ、稀に四季報の見方で注意が必要な場合も。
前号比矢印・会社比マークが付いている銘柄が上方修正発表を行っても、好業績が株価に織り込まれている場合「材料出尽くし」で売りが集中するケースもあります。
必ずしもチャンスとはなりません。
そのため両マークが付いている銘柄を絞った後に「投資家の注目度は低い銘柄」なのかを、日々の出来高数やYahooファイナンスの掲示板で確認するのがいいと思います。
配当
配当欄には四季報が今後の増配、減配を見据えた独自配当予想を掲載しています。
銘柄選びの際には、会社が増配を公表して人気化する前に、増配期待企業を先取りすることが大切です。
四季報予想で連続増配している銘柄に注目しましょう。
また、四季報の独自取材で「増配の可能性あり」と判断した場合は、業績記事で言及することが多いです。
「なぜ」増配予想を出せたのか、理由もあわせて確認すると企業の事業状況の理解が深められるのでおすすめします。
株主
四季報の株主欄には直近決算期時点の大株主10名、持ち株数、持ち株比率を掲載。
株主欄で上位株主を見れば「会社を支配しているのはどの人物・企業・機関なのか」が一目で分かります。
株主欄では株主構成を確認しましょう。
株主構成例
・グループ、子会社企業の割合
・カストディアン(信託銀行)
創業者や資産管理会社が筆頭株主となる「オーナー企業」の場合、経営判断が迅速となり急速な業績拡大に期待できます。
一方で独善的なワンマン経営に陥ると、誤った経営戦略を取ったり、軌道修正が効かなくなる等リスクも生じるので注意が必要です。
「グループ、子会社企業」の持ち株比率が多い企業は、自社の業績にかかわらずグループ企業による好影響・悪影響も受けます。
株価が連動するケースはよくある話なので、保有株比率の高い企業もあわせて分析すると良いでしょう。
そこで注目したいのが「カストディアン」です。
カストディアンとは、投資家に代わって株や債券などの管理業務を扱う信託銀行を指します。
日本トラスティ・サービス信託銀行、日本マスタートラスト信託銀行、資産管理サービス信託銀行などがカストディアンです。
要するに、カストディアンに委託するのは資金潤沢な機関投資家。
機関投資家は株価上昇(キャピタルゲイン)や配当(インカムゲイン)にシビアな考えを持っているので、株主構成にカストディアンが目立つ企業は有望株かもしれません。
四季報の見方を活かして銘柄選びの参考にしてみて下さい。
役員・連結会社
社長が誰であるのかは会社の将来性を左右する非常に重要な情報です。
社長交代が起きた時は、社内昇格か、他社からの引き抜きか、必ず確認しましょう。
このような重要人事は通常就任の約1ヶ月前に公表されることが多く、四季報ではいち早く情報を取り組んでいます。
見つけ次第前号と比べて新体制の変化を確認しましょう。
また、社長が株主にも登場、役員も同じ名字で株主に名を連ねていたら、同族経営の可能性が高そうです。
ちなみに日本の上場企業の約50%は同族経営。
一貫性を持たせたブレない経営戦略や安定した長期経営に期待できるものの、コーポレートガバナンス(企業統治)がゆるく仕事とプライベートを公私混同するリスクもあります。
役員構成を見て同族経営・非同族経営なのか、株主比率を調べて企業の特徴を調べましょう。
■ 連結会社
連結会社欄では、子会社の企業名が記載されています。
連結対象となるグループ会社を知ることは重要で、株式市場では連想買い・売りが頻繁に起こるためです。
「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉をご存知でしょうか。
何かことが起きると巡り巡って、思いがけないところにも影響が出ることを意味します。
株式市場でも連結会社の親会社、子会社で利益、不利益が起これば影響を受けます。
つまり、連結会社間で因果関係となる可能性は十分あり得るので、気になる銘柄があれば連結会社の状況まで確認してみて下さい。
財務
株式欄では「発行済み株式数」と「時価総額」に注目しましょう。
発行済み株式数とは、企業の普通株式として市場で売買されている株式の数です。
株式発行数で株価の値動きに特徴があり、大型株の値動きはゆるやかな一方、中・小型株は一つの材料だけで荒い値動きにもなります。
下記図は参考表です。
項目名 | 発行済み株式数による目安 | 特徴 |
---|---|---|
大型株 | 2億株以上 | 値動きがなだらか |
中型株 | 6000万株以上2億株未満 | 大型株と中型株の中間 |
小型株 | 6000万株未満 | 値動きが激しい |
例えば短・中期トレーダーは小・中型株、長期トレーダーは大型株を狙うなど、投資スタイルに合わせて銘柄タイプを代えるのも手でしょう。
次は時価総額です。
株価に発行済み株式数をかけて計算する時価総額は、いわば会社の金額です。
時価総額はできるだけ低い銘柄、時価総額100億円以下の銘柄は狙い目と言えます。
時価総額が1千億円を越える企業はすでに投資家人気が高く、事業も成熟期に入っていることが多いです。
成長余地が小さいと株価上昇期待も低くなります。
そのため時価総額が低く人気化していない銘柄は、ビジネスモデルの成長やニッチ分野で株価のリターンは大きいので、株価上昇にも期待できるでしょう。
■ 財務
四季報の財務欄には、貸借対照表の主要項目「総資産」「自己資本」「自己資本比率」「資本金」「利益余剰金」「有利子負債」が掲載されています。
数値データは企業の最新決算期末時点におけるものです。
四季報の見方で特に抑えておきたい項目は「自己資本比率」「利益余剰金」「有利子負債」の3つ。
「自己資本比率」は総資産に占める自己資本の割合で、パーセンテージが高いほど経営が安定していると言えます。
自己資本比率は50%を越えていれば大丈夫です。
30%を下回るとやや問題視する必要が出てくるので、企業の資金繰りを確認するといいでしょう。
ただ、業種により自己資本比率の割合も変わるため、競合他社の数値と比較してみることをおすすめします。
「利益余剰金」は過去の利益の蓄積です。
数値が高いと経営が上手くいっている証拠ですが、毎期利益余剰金が増加しているのに配当や優待を出さない企業は、株主を軽視している可能性もあります。
また、利益余剰金がマイナス(▲)の場合は、利益の蓄積が全くない状態のため厳しい財務状況と言えます。
最後に「有利子負債」は、主に銀行からの借入金と社債(転換社債を含む)から構成され、金利をつけて返済しなければならない負債です。
ある程度の借り入れはどの企業もつきものですが、支払金利は将来に渡り固定的に発生するため、業績が低迷した場合には利益を圧迫します。
有利子負債の残高が売上高を越える場合は要注意です。
■ 指標等
指標等ではROE・ROAを着目しましょう。
ROE・ROAを端的に言いますと、どれくらい効率よく経営を行えているのかがわかる指標です。
ROE(自己資本利益率)は株主が出資した株主持分からどれだけ純利益を上げられたか、ROA(総資産利益率)は資産を使って利益をどれだけ生み出したかを見る指標です。
目安はROE10%以上、ROA5%以上の企業は優良企業と評価できます。
■ キャッシュフロー
キャッシュフロー欄は資金の流れを表し、本業の営業活動で稼いだキャッシュ(営業CF)を投資に回し(投資CF)、その過不足を財務で調整する(財務CF)という構図になっています。
そのため3つのキャッシュフローを個別に見るのではなく、関係性や過去数年の推移などから総合的に評価することが重要です。
ここではキャッシュフローの仕組みや難しいことは一切抜きにして、3つの組み合わせパターンから読み取れる会社状態を解説します。
組み合わせは計8通りです。
① 営業CF + 投資CF + 財務CF + |
本業の営業活動は好調。さらに資産売却、借り入れ増加。 事業転換など大きな資金重要が発生する計画があると推測できる。 |
② 営業CF + 投資CF + 財務CF – |
営業活動と固定資産売却で得た現金を借入金返済に使っている。 財務改善を図っている会社だと推測できる。 |
③ 営業CF + 投資CF – 財務CF – |
営業活動で得た現金を資産や借入返済に充てている。 投資と財務改善を並行して行っており、キャッシュフローの理想形と言われるパターン。 |
④ 営業CF + 投資CF – 財務CF + |
営業活動で現金を生み出し、借入金も合わせて資産投資をしている。 成長途上型のベンチャー企業などに見られる。 |
⑤ 営業CF – 投資CF + 財務CF + |
本業の営業活動で現金が得られず、資産売却や借入金で資金繰りをしている。 注意すべき問題企業の典型的なパターン。 |
⑥ 営業CF – 投資CF + 財務CF – |
営業活動で現金が生み出せず、資産売却で借入金を返済している。 過去の蓄積を切り売りしている状態。 |
⑦ 営業CF – 投資CF – 財務CF + |
営業活動で現金が生み出せず借入金を調達して投資している。 再建途上の企業に見られるパターン。財務バランスは悪化する。 |
⑧ 営業CF – 投資CF – 財務CF – |
営業活動で現金が稼げないが、投資ができて借り入れも返済している。 過去の蓄えが分厚い会社だからできるが、この状態の長期化は好ましくない。 |
上記の通り、キャッシュフローの形だけで財務状況の良い・悪い企業を判断することができます。
ちなみに私の狙い目は④です。
成長力のあるベンチャー企業は事業投資を積極的に行い、今後の成長性に期待することができます。
是非キャッシュフローの形も銘柄選びの参考にしてみて下さい。
資本移動・株価・時価総額順位・比較会社
資本異動欄では、増資・減資・合併・株式交換・株式分割による発行株式数の変化が載っています。
株価は会社の1株あたりの価値を表すもの。
つまり、株価を見るには株数を把握することが必要不可欠、その株数の動きが分かるのが四季報の資本移動欄です。
資本移動欄は略表記の数が多いので、まずは表記の役割、意味を解説します。
略式名 | 正式名称 | 意味 |
---|---|---|
有 | 額面割当有償増資ないしは有償割当増資 | 新株の割当を受ける権利を既存の株主に与える増資のこと |
分 | 株式分割 | 発行済みの株式を分割して株式数を増やすこと |
無割 | 無償割当 | 株式の保有数に対して無償で株式を交付すること |
公 | 公募 | 不特定多数の投資家に対して株式の購入申し込みをしてもらうこと |
中 | 中間時価発行 | 現在株価と額面金額の中間価格で新株を発行すること |
三者 | 第三者割当増資 | 資金調達を目的に特定の第三者に新株を発行すること |
縁故 | 縁故募集 | 経営者・従業員など特別な関係者に限定して募集すること |
株 | 株式配当 | 新株発行によって配当をすること |
無 | 無償とは | 株主から資金を得ず、資産から株主に新株を割り当てること |
優 | 優先株 | 配当権利や会社解散時の財産を優先的に受け取れること |
予約権 | 新株予約権 | 会社の株式を受け取ることができる権利 |
交換 | 株式交換 | 企業が発行済株式の全部を他の会社に取得させること |
この中で特に注目しておきたいのが「分」株式分割です。
株式分割は1株あたりの株価を下げることで市場の流動性を高め、株価上昇に繋がる効果が挙げられます。
ただ、株式分割の本質は鞍替えです。
企業が鞍替えをするには日本取引所グループの市場変更基準に則り、株主数、株式流通数を高める必要があります。
基本的に鞍替えが行われると株価上昇傾向となるので、株式分割を頻繁に行う企業は狙い目です。
2019年にはレアジョブ(6096)が株式分割を二度行いました。
東証マザーズからの鞍替えを目指しているようなので、実現時には大幅な株価上昇に期待できるでしょう。
■ 株価
株価欄は過去の高値・安値、直近3ヶ月の高値・安値を掲載しています。
どのように株価推移をしたのか、参考程度に確認して下さい。
■ 比較会社
比較会社欄は、同業または類似業種の上場会社の中から、時価総額などの規模が近い企業、営業地域が近い企業を四季報編集部が選定して掲載します。
どの企業が最も成長する可能性が高いのか、株価が割安な水準はどこか、などをあわせて確認することをおすすめします。
株価チャート
四季報の企業ページには業績などの会社情報に加えて株価チャートも掲載。
ローソク足、移動平均線、信用取引の買い残と売り残、出来高が記載されているので、テクニカル分析による銘柄分析も可能です。
ちなみにローソク足には月足を採用。
直近約3年分の月足が掲載されているので、四季報の株価チャートは中・長期の投資判断に役立てて下さい。
そこで、参考になるのが移動平均線と信用取引です。
移動平均線は12ヶ月の実線、24ヶ月の点線の2本が引かれており、移動平均線より上に月足があれば強気相場になりやすく、下にあれば株価が移動平均線に押さえられていると判断できます。
信用取引は買い残量を確認しましょう。
色の付いているモヤモヤしたものが買い残量を表すので、後に売り圧力に変わる要因となるものです。
一定量の買い残量が横ばいで推移している場合、投資家が入れ替わりながら信用買いを行っているため急落する可能性は低いですが、注意したいのは買い残量が一時的に膨れているケースです。
なにかしらの好材料で買い残が増えたと考えられるので、高値掴みをしないように気を付けて下さい。
株価指標
株価指標欄では企業のPER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)を見ます。
四季報では銘柄の直近2期分の予想PER、過去3期分の高値・安値平均の実績PERを掲載しています。
使い方は予想PERと実績PERを比較しましょう。
例えば、予想PERが高値平均の実績PERに近付いた場合、過去の経験則も兼ねてそろそろ売り時になるかもしれないと判断することもできます。
PERは15倍以下が割安と言われているため数値を見ることも大切ですが、比較をして活用できるのは四季報の醍醐味です。
また、PBRは1倍以下の銘柄に注目。
株価が帳簿上の1株当たり価値の何倍なのかを示しており、1倍を下回っていれば割安であると判断できるため。
ちなみにPBR1倍以下の銘柄は東証二部やジャスダック市場で見られることが多いです。
見つけたからといってすぐに飛びつかず、なぜ割安なのに放置されているのか、業績動向などもあわせて見ながら検討するのがいいでしょう。
四季報の見方 手軽に使える株情報誌
今回は企業ぺージ12項目の一歩踏み込んだ見方、考え方を解説しました。
四季報は堅い株情報誌と思われがちですが、要点さえ押さえてしまえば投資の難しい知識、指標の計算式を覚える必要はありません。
中でも③・④・⑨は四季報の重要項目です。
当記事を活用して見方を抑えていただき、有望株の発掘にお役立ていただけますと幸いです。
もし、当記事に載っていない四季報の見方で知りたいことや要望がありましたら、記事下部のコメント欄より質問をお寄せ下さい。
できる限り回答をさせていただけますので宜しくお願い致します。
解説読みました。質問ですが、今後の株価の予想をするのは、1株益✕実績PER高値平均でみたほうがいいのでしょうか。もしくは予想PERでみたほうがいいのでしょうか。それとも他の方法があれば教えていただきたいです。よろしくお願いします。