2019年10月1日に消費税増税の実施が決まり、日本の消費税率は10%に引き上げられます。
2014年4月(5%から8%)以来、約5年半振りの増税となり、個人消費が冷え込み景気の悪化が予想できます。
しかし、すべての株式がネガティブな影響を受けるわけではなく、消費税増税による恩恵を受けそうな企業も存在します。
そこで、元証券マンの管理人が過去の増税時の状況を踏まえながら、上昇期待の本命銘柄を厳選しました。
銘柄選びの参考にしていただけたらと思います。
記事の目次
消費税増税 本命銘柄は「タバコ」「100均」「POSレジ」
高額な商品・サービスは、増税前の駆け込み需要が想定できます。
例えば「不動産・自動車・家電」などです。
2%の増税と言えど、100万円なら+2万円、1,000万円なら+20万円の支払いが増すことになりますからね。
ただ、不動産なら住宅ローン減税、自動車なら自動車税の引き下げ、家電ならポイント還元など、政府の景気対策によって、駆け込み需要にあまり影響のない可能性もあります。
そのため、駆け込み需要が入りそうな企業を本命銘柄と見ています。
今回はその中から3銘柄を厳選してみました。
本命銘柄①:JT(2914)
JT(2914) 2019年8月20日時点
営業利益 :518,000百万円(前年同期比-8.3%)
PBR:(連)1.52倍
PER:(連)11.18倍
ROE:(連)13.2%
予想配当利回り:6.81%
自己資本比率:49.8%
JTはタバコ並びに医薬品、飲食を製造・販売する企業で、タバコにおいては製造を独占しています。
同社の魅力は高配当利回りにあり、配当性向※は74.6%と投資家への還元を大事にしています。
※純利益から配当金にどのくらい当てているのかをパーセンテージで表した指標
JTは10月1日の消費税増税に向け、115銘柄の価格改定を財務省に申請したと発表しました。申請が通ると、1箱あたり10円の値上げ(紙巻きたばこ例:480円 → 490円)となります。
JTを挙げた理由は、増税前にタバコをまとめ買いする愛煙家によって、売上が伸びる可能性が考えられるためです。
2010年10月はタバコ増税に伴い、1箱あたり100円前後値上げ(紙巻きたばこ例:300円 → 410円)し、9月の販売が前年同月比1.9倍まで上昇した実績もあります。

2019年10月の値上げ幅は少ないですが、まとめ買いする消費者はいると思います。
昨今は紙巻きたばこの販売額が減少する一方で、加熱式たばこの販売強化で売上が上向いています。
消費税増税で本命銘柄の一つになると思います。
本命銘柄②:セリア(2782)
セリア(2782) 2019年8月20日時点
営業利益 :17,200百万円(前年同期比+2.4%)
当期純利益:11,700百万円(前年同期比+1.6%)
PBR:(単)2.84倍
PER:(単)16.42倍
ROE:(単)17.3%
予想配当利回り:2.17%
自己資本比率:75.0%
セリアは「日常を彩る」をコンセプトにする大手100円ショップです。
そんなセリアに、消費税増税後により注目が集まるのではないかと予想します。
増税によって日用品の物価が上昇すると、手頃な100円均一に目を向ける消費者が増えることが挙げられるためです。
セリアは若い女性がメイン顧客のため、日用品の中でもコスメ商品に期待ができます。
4月末、本格コスメブランドを立ち上げた大創産業(ダイソー)が爆発的な売れ行きを記録しました。1品100円という低価格らしからぬデザイン、クオリティー、アイテム数に人気が集中したようです。
セリアは8月20日現在、コスメブランドこそ立ち上げていないものの、ネット上にはコスメ商品の高評価が目立ちます。
増税を追い風に、女性人気を勝ち得ているセリアはコスメ商品の新展開も予想できます。セリアの今後の動向から目が離せません。

セリアは100円ショップの原理を守り「100円商品のみ」の販売を続けるのもいいですね。
本命銘柄③:東芝テック(6588)
東芝テック(6588) 2019年8月20日時点
営業利益 :20,000百万円(前年同期比+11.2%)
当期純利益:12,000百万円(前年同期比+7.0%)
PBR:(連)1.93倍
PER:(連)14.66倍
ROE:(連)11.9%
予想配当利回り:1.88%
自己資本比率:34.1%
最後におすすめするのが、POSレジ※1の国内シェア50%を占める東芝テックです。
※1 「いつ・何の商品が・いくらで・何個売れたか」を知ることができるレジで、販売情報をリアルタイムで集計・管理・分析します。
今回の消費税増税はただ増税をするわけではなく、商品によって税率が変わる軽減税率を採用しています。
軽減税率とは
酒類を除く食品表示法に規定されている飲食料品と週2回以上発行されている新聞は軽減税率の対象になり、消費税8%に据え置かれます。一方で、酒類、外食、ケータリングの食事などについては軽減税率の対象とならず、消費税率10%が適用されます。
軽減税率制度によって、2種類(8%・10%)の税率対象商品・サービスを扱う小売店や飲食店は、POSレジの買い替え需要が発生します。
POSレジは一般的なレジとは異なり、顧客データを活かして販売戦略を練ることができます。
チェーン店を中心に一斉に買い替えることも考えられるので、POSレジ関連である東芝テックに注目ができると思います。
消費税増税後から消費は冷え込む
日本では1989年に初めて消費税3%が導入されました。
当時はバブル景気が後押しし、消費税の導入があっても消費が冷え込むことはありませんでした。
では、消費税増税が実施された後の影響はどうだったでしょうか。
1997年に3%から5%、2014年に5%から8%に税率が引き上げられた時の状況を振り返ってみてみましょう。
消費税増税 3% → 5%
1997年4月に消費税が5%に増税されました。
増税月の4月の日経平均株価は終値19,151円でしたが、同年12月には終値15,258円まで下がりました。株価3,893円の下落です。
増税後から消費の冷え込みが発生したことに、株価が影響を受けたのだと思われます。
下記、「家計最終消費支出」のグラフをご覧ください。
1996~1997年にかけて駆け込み需要が発生し、1997年~1998年に消費が落ち込んでいるのが分かりますね。
ただ、駆け込み需要の反動だけで、消費が落ち込み景気が悪化する要因となったわけではありません。
1997年はバブル後遺症で金融機関の破綻などにより、デフレにつながった影響は無視できません。
・7月 アジア通貨危機で大幅な円安
・11月 証券会社3社の倒産(3日三洋証券、17日北海道拓殖銀行が破綻、24日山一證券は廃業)
増税だけでなく、デフレによって消費の冷え込みは加速したのでしょう。
消費税増税 5% → 8%
2014年4月1日に消費税は8%に増税されました。
5%から8%への消費税増税は、2012年の野田政権の増税法案ですでに決議されていたものだったので、増税のタイミングは後任の安倍首相に託されていました。
そして、2013年のアベノミクス「3本の矢※」の政策、2020年に56年ぶりの東京五輪開催が決定したことによって世間は好景気となり、2014年4月に安倍首相は増税を導入しました。
※ ①機動的な財政政策、②大胆な金融政策、③投資を喚起する成長戦略
2014年の日経平均株価を見ると、4月の終値13,860円から12月の終値16,291円まで上昇しました。増税の影響を打ち消すほど、アベノミクス政策と東京五輪開催のニュースが大きかったことが分かります。
しかし、景気は好調であっても、増税後に消費は冷え込むのがセオリーのようです。
下記、「家計最終消費支出」のグラフをご覧ください
1997年同様、増税前に駆け込み需要が集中し、以降は消費停滞ムードとなっていました。
2014年の夏のボーナスは前年同期比+5.7%と1990年以来の伸び率でありながら、消費は落ち込んだのが分かります。
好景気であっても消費は比例しないということですね。消費税増税は、消費者に与える経済的影響が大きい国策だと言えるでしょう。
消費税増税 本命銘柄の選定理由は「個人消費」
過去の消費税増税時の日経平均株価を振り返ると、国の政策やイベントなどで下落を避ける事はできそうです。
ただ、株価は上昇しても、増税後に消費が冷え込むのが原則のようです。
そのため10月の消費税増税後に、消費者の財布の紐が固くなることも想定できます。
日本のGDPの約半分を個人消費が占めているのを考えると、個人消費の動向を読みながら本命銘柄を選ぶのが大事になると思います。
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