米中貿易戦争に至った経緯
2016年の米国大統領選挙時から、トランプ大統領が挙げていた貿易不均衡の問題は、2年の時を経て「貿易戦争」という通称で激化しています。
その対象相手国は主に中国であり、2018年から米国が追加関税措置を慣行しだしたことに起因します。
不均衡の度合いが群を抜いて大きいのが中国で、以前よりトランプ大統領は名指しで「是正すべき相手国」として様々な牽制を行ってきました。
一度は習近平国家主席の訪米により、米中首脳会談が実現しました。
ここでは貿易不均衡解消に向け、米国の対中輸出を増やすための100日計画策定が取り決められています。
しかし、2017年の7月に閣僚同士で行われた包括経済対話メカニズムの交渉は、全く進展を見ないまま幕を閉じました。
そんな中で中国側から発表された対米貿易黒字は2017年に過去最高を記録。これを受け米国は「緊急輸入制限」という措置に踏み切ることになります。
これがいわゆる追加関税措置であり、鉄鋼やアルミニウム等、複数の製品を対象に中国に限らずほとんどの国に対して施行されました。
元々米国から見た不均衡は、中国のみならず多くの国に対して存在しているものの、この時の中国の黒字額の発表がキッカケとなり、中国以外の国は巻き添えを食ったと言えるでしょう。
するとこれに対して中国側は、米国に対象を絞り果物など128品目の米国製品に報復関税措置を行うことを発表します。
以降、両国のこのような泥仕合は日を追うごとにエスカレートしていき、「米中貿易戦争」と呼ばれるまでに発展しています。
米中貿易戦争による株価への影響は?
この米中貿易戦争は市場に対しても大きな影響をもたらしています。
とにかく米国と中国という2大貿易大国で繰り広げられている騒動ですから、影響が無いセクターなどほとんど無いと言ってよいでしょう。
日本も例外ではありません。この騒動によりまず打撃を受けたのが海運業です。
海運はまさに国間にモノを運ぶことを生業としているのですから、それが停滞することにより収益性が悪化するのは火を見るより明らかです。
一番直接的であると言えますね。現に、米中貿易戦争が勃発した2018年からは、株価はダウントレンドに転換しています。
また当騒動は市場にも大きく影響しており、「米中貿易戦争懸念が後退・再燃」という観測が出るたびに全体相場が揺さぶられていました。
先にも述べましたが、米国と中国という2大貿易国が輸入規制に走ると世界全体の経済が冷え込むこととなるため、市場が警戒するのも必然ですね。
そして、このような局面に敏感に反応するのが商社、特に大手の商社株は市場の懸念に敏感に反応します。
為替についても基軸通貨を持つ米国が当事者であることも含め、市場の懸念によりリスクオフで安全資産への逃避が起こります。
輸出に不利となる円高は日本の特に商社にとって強い逆風となります。
現に2016年中盤以降上昇を続けてきた大手商社株は、2018年9月から全体につられて上昇する場面はあるも、2018年からは上げ止まっています。
2019年、米中貿易戦争はどうなる?
米国と中国は、構造問題等を巡り90日の期限を設けて協議する方針を示しました。
つまり両国が、追加関税に猶予を持たせるということで一旦は合意したということですね。
2018年終盤、米中貿易戦争は一時停戦状態となっています。
今回の米中貿易戦争によるダメージは、中国側の方が大きく浸透している模様です。
特に、豚の餌として多く輸入されている米国産の大豆に高額の関税が掛けられたため、中国の畜産家は廃業寸前に追い込まれています。
米国産からブラジル産や国内産に変えるという対策を立てても、必要量には全く足りていないとのこと。
そんな状況から、中国社会科学院は「協議と交渉を強化し、貿易戦争のエスカレートを極力避けるべきだ」という政策的な提言を打ち出しました。
実際に、中国は米国からの大豆輸入再開、米国からの輸入車の関税引き下げといった譲歩に出ていますね。
今件が後押しし、中国はバブルの崩壊が起こっている様相です。
特に不動産においては資金レバレッジにより需要が拡大していたものの、今回の米中貿易戦争により購買意欲が尻すぼみすれば、不動産価格が下落します。
そうなれば証拠金の目減りが起こり、レバレッジによってその損失は倍化することになります。いわゆる負の連鎖が起こり、信用創造が崩壊。
これは、2007年に勃発したサブプラム問題と同様の流れです。
中国経済の失速は2019年には世界中に波及すると観測が優勢です。現に有識者が、2019年の世界経済の展望に対して悲観的な発信をしています。
米中貿易戦争の着地点も、未だ見えていません。
いくら中国が不利であるとしても、米国に屈するということは中国共産党の威厳が失墜することに直結するため、止めたくても止められないというところでしょう。
米中貿易戦争が着地できない状態はそのまま世界経済の鈍化に繋がり得ます。
特に日本の自動車産業においては、日系企業の現地生産規模は最大であり、中国経済の後退による被害は甚大でしょう。
一方で、対米輸出依存度も他の産業に比べて高いため、米中貿易戦争による米国の景気悪化の影響も深刻です。
この上にトランプ政権が自動車に対して追加関税を掛けてくるようであれば、日本のGDPにも大きく影響してくることは間違いないでしょう。
2019年は「景況の調整が起こる年」という認識は持っておいた方が良さそうです。
口コミはありません